プログラムの概要
研修医の皆さんの「精神科医としての基礎作り」を十分に実施した上で、最終達成目標を「精神保健指定医」「精神科専門医」の両資格取得に設定します。患者さんとの情緒交流能力、患者さんに対する全人的理解を備えた精神保健指定医・精神科専門医への到達を当院あげて応援します。研修期間を当初、3年間と設定しますが、状況に応じてプログラムを弾力的に運用します。
研修重点項目は次の通りです。
- 「精神的・心理的問題を抱えた人たち(患者さん)のお話を丁寧に、十分に聴くこと」が精神医療における本質的な鍵技能 key skill であることを理解した上で、適切な精神療法的態度・精神療法的技法を修得すること
- 精神症状を正確に把握し、評価すること
- 精神の病的状態(精神障害)の原因や症状、治療方法、予防、援助のありかたなどを理解すること
- 『精神科チーム医療』のシステムについての理解と能力を獲得すること
- 『精神医学』は「医科学」でありながら「人間性」にも大きく関わる学問であることを十分に了解すること
年次毎のプログラム概要は以下の通りです。
1年次研修
副主治医として統合失調症など精神病状態の患者さんを担当することから開始します。指導医・精神保健指定医のもとで、精神療法、薬物療法、心理的検査について責任をもって実行することが第一歩です。隔離室の回診をデューティーとして担当すると、急性期患者さんの精神症状の変化を認識できます。外来研修は、診療への陪席から開始です。指導医、精神保健指定医、精神保健福祉士、心理士による新患外来の予診に陪席して、外来診療の進め方、診療録の記載方法、薬剤処方について学びます。
後半には看護師や精神保健福祉士と協力して、「退院後地域支援計画」の立案を学びます。地域支援の主要拠点であるデイケア、訪問看護への参加は貴重な体験です。
2年次研修
気分障害、神経症性障害、認知症などの患者さんに関する研修が加わります。更に、療養病棟に長期入院している患者さん、身体合併症を有する患者さんに関して、指導を受けながら幅広く臨床体験を積みます。外来研修では少しずつ、陪席でなくても自分でやっていけるご自身の成長に気づきます。「社会復帰支援プログラム」の大切さを実感する機会も増えます。
3年次研修
各疾患への理解に加えて、病棟運営や委員会(医療安全委員会、感染対策委員会など)にも理解を深めます。この時期は、職業人としての態度の修得も大切な課題です。スティグマや病苦に悩まされ社会的不利に陥っている患者さんとご家族への共感、プライバシィの尊重、看護師・薬剤師・精神保健福祉士・心理士・作業療法士・臨床検査技師・事務職員との協力と対話など、精神保健指定医・精神科専門医として相応しい態度を身に着ける段階です。
この年次は、「精神保健指定医」「精神科専門医」の資格申請に必要な症例を全て経験した上で、学会・講習会に参加・受講することが目標です。精神保健指定医取得、精神科専門医合格は目前です。
当院研修の特徴
- 研修医自身の目標・希望が尊重され、指導医・精神保健指定医との相談で自由度の高い研修プログラムを設計できます。
- 病棟、外来での実践的研修を中心に、デイケア、当院関連施設(介護老人保健施設、訪問看護ステーションなど)、地域保健、提携医療機関なども研修場面として選択できます。
- ほぼ全ての精神障害の症例に関して、急性期・療養期・社会復帰期にわたって携わり、臨床体験することができます。
- 個別の臨床指導、コンサルテーション、スーパービジョン、症例検討会、診断会議、カンファレンス、チームミーティングが日常的に十分に行われるため、精神科医としての成長が速まります。精神科医の仕事は時に孤独な作業ですが、これらチーム医療によって勇気づけられます。
- 学会発表、セミナー、勉強会などへの参加も大いに奨励されます。
当院の研修環境
当院は真青な日向灘に面する8階建の病院です。海から昇る朝陽の清々しさ、季節が移ろい海に沈む夕陽の息飲む美しさは、精神科医自身の葛藤や疲労、困難を癒してくれる絶好の環境です。都心の病院では望めない雰囲気が、当院の病棟や外来、医局、スカイレストランなどを包み込みます。精神保健指定医・精神科専門医になるためには、格別の研鑽が必要です。実際的な治療技法・態度の学びに加え、「人格の涵養」としか言いようのない全人的な成熟が求められます。精神保健指定医・精神科専門医の真の実力と魅力は、良い研修環境にあってこそ花開きます。研修医の皆さんとともに、私たち現職員も学び成長して行きたいと考えています。病院の前に昇る朝陽
幻想的な夕暮れどき
温暖な気候
恵まれた自然
夜も魅力的な延岡の街
病院近くの海岸
指導体制
精神科専門医制度指導医・精神保健指定医が研修の全てにわたり日常的に指導します。臨床に並行しながらケース・レポートや雑誌論文の作成、執筆にも十分な指導を注ぎます。研修医の待遇
当院規定により、安心して研修に集中できる状況の確保をお約束します。日本精神神経学会「研修ガイドライン」に対応した研修プログラム詳細
患者及び家族との面接(精神療法)
指導医・精神保健指定医の面接に陪席して臨床現場を実体験しながら研鑽する。次段階で副主治医として自ら実践し、指導医らと振返る。2年次より輪読会にて「精神療法」に関する専門書に親しみ、精神療法の技法・態度を学ぶ。疾患の概念と病態の理解
指導医・精神保健指定医による院内「精神医学」講義(全30回)を受講し、精神疾患の概念及び病態を俯瞰する(「院内テキスト」を使用)。各症例において指導医・精神保健指定医とのdiscussionをはかり、院内講義で学習した概念・病態を臨床的に裏付け、理解を更に深める。診断と治療計画
指導医・精神保健指定医が主宰する個別の臨床指導、コンサルテーション、スーパービジョン、症例検討会、診断会議、カンファレンス、チームミーティングに参加して「診断フォーミュレーション」に習熟する。正しい診断に基づき、看護師・薬剤師・精神保健福祉士・心理士・作業療法士らと協議しながら最適な治療計画を建てるチーム医療の実際を体験する。検査法
指導医・精神保健指定医・内科医・心理士・臨床検査技師との協議により、検査の必要性の判断の仕方、実施された検査結果の評価と解釈を学ぶ。薬物・身体療法
指導医・精神保健指定医・内科医による院内講義で薬物療法の基本を学び、臨床場面で指導を実際に受けながら、薬物療法への理解を深める。向精神薬における「単剤少量の薬物使用」「副作用に対する十分な注意と配慮」を当初から認識するために、薬剤師も加わった日常的なミーティングに参加し、正しい薬物療法に取組む。身体療法に関しては、更に作業療法士・理学療法士らのメディカルスタッフが加わる。精神療法
上記1)に記した通りであるが、当初は支持的精神療法の修練に努める。指導医・精神保健指定医による院内「精神医学」講義の中でも精神療法のウエイトは高いが、まずは特定の理論・技法に偏らない精神療法的態度・精神療法的技法(面接技法)が肝要である。指導医・精神保健指定医が主宰する個別の臨床指導、コンサルテーション、スーパービジョン、症例検討会で臨床的実力を更に育む。心理社会的療法、精神科リハビリテーション、及び地域精神医療・保健・福祉
院内外の社会資源ネットワークを実際に体験することから開始する。1年次後半より、退院後支援について、看護師・精神保健福祉士らと協力し、地域支援計画の立案を学ぶ。院内関連施設であり、地域支援の主要拠点でもあるデイケア、訪問看護ステーションへの参加、及び保健所・市役所福祉・社会福祉協議会・地域生活支援センター・作業所・援護寮・グループホーム・民生委員(児童委員)・職場・学校など広く社会資源との連携を体験する。社会復帰を目指す大切さと責任の重さを、各機関責任者及び指導医・精神保健指定医が運営する「退院者支援会議」などを通じて体験する。精神科救急
一次・二次・三次救急の実際を指導医・精神保健指定医とともに体験実践する。病院内、病院間、広域ネットワークなど多種多様な精神科救急の現実を学ぶ。リエゾン・コンサルテーション精神医学
当院内科医、提携医療機関からの要請に応じて現場に出向き、指導医・精神保健指定医の実践にまず陪席し、徐々に体得する。リエゾン専門医・内科医らによる特別研修も開催する。法と精神医学
指導医・精神保健指定医・精神保健判定医による院内講義に加え、実例があった場合に指導の下、司法精神医学の理論と実践を体験学習する。医の倫理
指導医・精神保健指定医・精神保健判定医らの日常的指導に加え、司法関係者と懇談して「医の倫理」の涵養に努める。安全管理
指導医・精神保健指定医・内科医・看護師・多職種のメディカルスタッフらによる個別の臨床指導、コンサルテーション、スーパービジョン、症例検討会、診断会議、カンファレンス、チームミーティング、及び医療安全管理委員会などが日常的に行われる。それらへの参加を通し、安全管理に関する精神科医としての力量を育む
研修プログラムの週間スケジュール例
午前(9:00 - 12:30)
月曜日
外来診療(臨床指導)
火曜日
外来診療(臨床指導)
水曜日
外来診療(臨床指導)
木曜日
外来診療(臨床指導)
金曜日
外来診療(臨床指導)
土曜日
休日
日曜日
休日
午後(2:00 - 6:00)
月曜日
コンサルテーション・カンファレンスなど
火曜日
医局会 スーパービジョンなど
水曜日
症例検討会・診断会議・輪読会など
木曜日
院内講義・ミーティング・各委員会など
金曜日
地域の社会資源ネットワークへの参加など
土曜日
休日
日曜日
休日
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